Microsoft は Edge、Apple は Safari を推奨しており、Google Chrome を積極的に勧めることはありません。その背景にはいくつかの理由があります。大きく分けると ビジネス的な理由 と 技術的・プライバシー的な理由 があります。
1. ビジネス的な理由
① プラットフォーム囲い込み
- Microsoft → Windows に Edge を標準搭載。これにより検索エンジン「Bing」、広告ネットワーク、Microsoft 365 との統合がしやすい。
- Apple → Safari を macOS/iOS に標準搭載し、検索エンジンは Google からのライセンス料(年間数千億円規模)で収益を得つつ、ブラウザ主導権は Apple が保持。
つまり、「自社ブラウザを使ってもらうこと」で 検索エンジン利用・広告収入・エコシステム内滞在時間 を確保できます。Chrome を推奨すると、利益が Google に流れてしまいます。
2. 技術的・プライバシー的な理由
① トラッキングとフィンガープリント
- Chrome は広告ビジネスを持つ Google が開発しているため、ユーザーの行動データ収集に関連する設計が多いと警戒される。
- Safari では「Intelligent Tracking Prevention (ITP)」、Edge では「Tracking Prevention」など、広告トラッカーやフィンガープリント(ブラウザの個別識別技術)を制限する機能を前面に押し出しています。
- Apple は特に「プライバシー保護」をマーケティングの柱にしており、「Chrome はトラッキングに弱い」と暗に示しています。
② パフォーマンス最適化
- Safari は macOS / iOS 向けに深く最適化されており、消費電力を抑えてバッテリー持ちを良くすることを重視。
- Edge は Chromium ベースですが、Microsoft 独自の最適化を加え、Windows での省エネ性や Office との連携を強調。
→ もし Chrome を推奨すると、自社が最適化してきた「性能・省電力」の優位性を失います。
3. 法規制と市場支配リスク
- Google Chrome はすでに世界シェアの 60%以上を占めています。
- Microsoft や Apple がさらに Chrome を推すと、「独占的支配を助長した」として規制当局に目を付けられるリスクがあります。
- 逆に「うちのブラウザも選択肢として用意している」と示すことで、規制リスクを避ける狙いがあります。
まとめ
- ビジネス面:検索・広告収入やエコシステム維持のため、他社(Google)にユーザーデータを渡したくない。
- 技術・プライバシー面:トラッキング対策や省エネ最適化など、自社ブラウザの優位性をアピール。
- 規制面:Chrome 一強状態をさらに強化するのを避けたい。
💡 ユーザーとしては 利便性・拡張機能 を理由に Chrome を選ぶ人が多いですが、Microsoft と Apple からすると「収益・戦略・規制回避」の観点で、自社ブラウザを推すのは自然なことなんです。
ブラウザ比較表(2025年時点)
項目 | Chrome (Google) | Edge (Microsoft) | Safari (Apple) | Firefox (Mozilla) |
---|---|---|---|---|
セキュリティ | 高い(自動更新・Sandbox化・拡張機能の審査あり) | 高い(Chromiumベース+Microsoft独自の保護機能) | 高い(Apple独自の堅牢設計・iOS連携強固) | 高い(オープンソースで監査可能・頻繁な更新) |
プライバシー保護 | △(Googleの広告ビジネスと結びつき強い、フィンガープリントに弱め) | ○(トラッキング防止機能あり、Bingとのデータ共有は一部残る) | ◎(ITPによるトラッカー遮断、広告追跡に最も厳しい) | ◎(デフォルトで強い追跡防止、ユーザーデータ収集が少ない) |
利便性・拡張機能 | ◎(最も豊富な拡張機能・Googleサービス連携が抜群) | ○(Chrome拡張が使える+Office/Windowsとの統合強い) | △(拡張機能は少なめ、Apple製品ユーザーには便利) | ○(主要拡張は揃うが、Chromeより少なめ) |
速度・省電力 | ○(高速だがメモリ消費が大きい) | ○(Chromiumベースで速いがリソース消費はChrome並み) | ◎(Mac/iOSで最適化、省電力性能トップ) | ○(そこそこ速い、改善中だが重いサイトで不利なことも) |
クロスプラットフォーム対応 | ◎(Windows / Mac / Linux / iOS / Android) | ○(Windows中心、MacやiOSはSafariより弱い) | △(基本はApple製品限定、Windows版は開発終了) | ◎(主要OSすべて対応、自由度高い) |
独自機能 | Googleアカウント連携、同期機能が非常に強い | Microsoft 365やCopilotとの統合、リーディングモード | iCloudキーチェーン、Handoffでデバイス間連携 | コンテナタブ(仕事/プライベート分離)、追跡防止が強力 |
総合評価 | 「便利さ重視」 → Googleサービスユーザーに最適 | 「Windowsとの統合」 → Officeユーザー向け | 「プライバシー+省エネ」 → Apple製品ユーザー必須 | 「プライバシー+自由度」 → 広告を嫌うユーザーに最適 |
結論
- 一番安全(プライバシー重視) → Safari(Apple製品限定)か Firefox(どの環境でも可)
- 一番便利(拡張・互換性重視) → Chrome
- バランス型(Windowsユーザー向け) → Edge
👉 ユーザーが 「何を優先するか」 で選択が変わります。
- プライバシー優先派 → Safari / Firefox
- Googleサービス依存派 → Chrome
- Windows+Office派 → Edge