光回線で「1G(Gbps)」や「10G(Gbps)」のような速度が実現されるのは、光ファイバーの特性や通信技術の進化によるものです。以下にその仕組みを簡単に説明します。
はじめに
1. 光ファイバーの特徴
光回線は光ファイバーケーブルを使用してデータを伝送します。これにより、以下の特徴が得られます:
- 高い帯域幅: 光信号は非常に多くのデータを同時に運ぶことができる。
- 低損失: 光信号は電気信号に比べて減衰が少なく、長距離でも高速通信が可能。
- ノイズ耐性: 電磁波の影響を受けにくい。
2. 通信速度を向上させる技術
通信速度を1Gや10Gといったレベルに引き上げるためには、以下の技術が使われています。
(1) WDM(波長分割多重)技術
- 光の異なる波長(色)を同時に使用してデータを伝送します。
- これにより、一つの光ファイバーで複数の通信を並行して行い、実質的な通信速度を向上させています。
(2) モジュレーション技術の進化
- データを光信号に変換する際の方法(モジュレーション)が進化しています。
- 初期の技術では単純なオン・オフの信号しか送れなかった。
- 現在では、複雑な信号(位相、振幅、波形の変調など)を使って、一度に送れるデータ量を増やしています。
(3) 多重化技術
- 光ファイバー内で複数の信号を同時に送信することで、帯域幅を有効活用しています。
- TDM(時間分割多重化)やFDM(周波数分割多重化)などの技術が活用されます。
(4) 信号増幅技術
- 通信距離が長くなると光信号が減衰しますが、光アンプ(EDFAなど)を使用して信号を増幅します。
- これにより、高速なデータ転送を長距離でも維持できます。
3. 機器の進化
家庭や事業所で使用する通信機器(ONUやルーター、スイッチなど)も高速通信に対応したものに進化しています。
- 10G対応のONU: 高速なデータを処理可能なハードウェア。
- LANポートの高速化: ギガビット対応のLANポートや10GbE対応のポートを搭載。
4. 通信事業者側の設備
プロバイダや通信事業者の基幹ネットワークでも、最新の通信技術が導入されています。
- 次世代PON技術: 10G-EPONやXG-PONといった技術で、1Gbpsを超える通信を可能にしています。
- ネットワークの最適化: 大量のデータを効率よくルーティングする技術。
帯域幅
光回線における帯域幅の違いは、使用する通信技術や設備の設計によって決まります。帯域幅とは、ある回線が一度に処理できるデータ量の上限を指しますが、これがどのように異なるかを詳しく説明します。
1. 光ファイバー自体の帯域幅
光ファイバーは、非常に広い帯域幅を持つ通信媒体です。この帯域幅の違いは、以下の要因によって影響を受けます:
- 波長範囲
光ファイバーは特定の波長範囲(通常1,260~1,675 nm)で光信号を伝送します。この波長範囲が広いほど、多くのデータを同時に送信可能です。- シングルモードファイバー(SMF): 長距離・高帯域幅向け。
- マルチモードファイバー(MMF): 短距離向けで帯域幅はSMFより狭い。
- 素材と製造技術
光ファイバーの素材や製造精度により、損失や歪みが異なり、それが帯域幅にも影響します。
2. 通信プロトコルの違い
同じ光ファイバーでも、使われる通信プロトコルや技術により、帯域幅が異なります。
1G対応 vs 10G対応
- 1G(Gbps)回線:
- 使用技術: GE-PON(Gigabit Ethernet Passive Optical Network)など。
- 帯域幅: 通常2.5Gbps(ダウンリンク)/1.25Gbps(アップリンク)。
- 消費者には1Gbpsを共有する形で提供。
- 10G(Gbps)回線:
- 使用技術: 10G-EPON、XG-PONなど。
- 帯域幅: 最大10Gbps(対称または非対称)。
- 1Gと比べ、1本の光ファイバーで約10倍のデータを処理可能。
多重化技術の違い
1Gと10Gで利用される多重化技術にも違いがあります:
- 1G回線: 基本的なTDM(時間分割多重化)を採用。
- 10G回線: WDM(波長分割多重化)やより高度なTDMを組み合わせ、データの同時伝送量を増加。
3. 機器の性能
帯域幅の違いは、通信機器の性能にも依存します。
- 1G対応機器: 比較的低い周波数帯域の信号を処理。
- 10G対応機器: 高周波数帯域の信号処理に対応し、処理能力が格段に向上。
例:
- ONU(光回線終端装置):
- 1Gモデル:1Gbpsのデータ処理能力。
- 10Gモデル:10Gbps対応で、より多くのデータを迅速に処理。
- LANポート:
- 1Gbpsポートでは10G回線の速度を活かせないが、10Gbps対応ポートではフル活用可能。
4. プロバイダの設備の違い
光回線事業者のネットワーク設備も帯域幅に影響します。
- 1Gプラン:
- 集中型スプリッターで複数のユーザーに帯域幅を分配。
- 通常1本の光ファイバーを最大32世帯で共有。
- 10Gプラン:
- 基幹ネットワークに10Gbps以上の高速通信設備を導入。
- 分配数を減らすか、ユーザーごとに高い帯域幅を確保。
5. 具体的な違いのイメージ
項目 | 1G回線 | 10G回線 |
---|---|---|
波長分割技術 | 基本的な波長数(1~2本程度) | 多くの波長(最大64本以上) |
伝送速度 | 最大1Gbps | 最大10Gbps |
対応機器 | 1G対応のONUやLANポート | 10G対応のONUやLANポート |
利用可能帯域幅 | 限定的(共有率が高い) | 広い(共有率が低い) |
TDMとWDMについて
TDM(Time Division Multiplexing、時分割多重化)とWDM(Wavelength Division Multiplexing、波長分割多重化)は、通信回線を効率的に利用するための多重化技術です。それぞれの仕組みや特徴を詳しく説明します。

1. TDM(時分割多重化)
TDMは、1本の通信回線を時間で区切り、それぞれの時間枠(タイムスロット)を異なるデータに割り当てて送信する技術です。
仕組み
- データを送信する複数のソースが存在。
- 各ソースに固定または可変の時間枠(タイムスロット)を割り当て。
- タイムスロットごとにデータを順番に送信。
- 受信側では、この順序に従ってデータを再構築。
例: 高速道路の車線を時間ごとに切り替えて、異なる車両が利用するイメージ。
特徴
- 利点:
- 単一の通信回線を効率的に使用。
- 技術が比較的シンプルで、コストが低い。
- 欠点:
- タイムスロットが固定されている場合、未使用スロットがあると帯域が無駄になる。
- データの遅延が発生する可能性がある。
種類
- 固定TDM:
- 各ソースに均等な時間枠を割り当て。
- 未使用のスロットがあっても無視される。
- 動的TDM:
- 利用状況に応じて時間枠を動的に調整。
- リソースの無駄を減らす。
使用例
- 電話回線: かつてのPSTN(公衆交換電話網)で利用。
- デジタル通信: E1/T1ライン(データを音声として送信)。
- ネットワーク技術: 一部の光ファイバー通信で利用。
2. WDM(波長分割多重化)
WDMは、1本の光ファイバーで複数の波長(色)を利用し、それぞれの波長に別々のデータを送る技術です。

仕組み
- データを複数の送信源から取得。
- 各データを異なる波長の光に変換。
- すべての波長を1本の光ファイバーに統合(多重化)。
- 受信側では各波長を分離(分波)し、データを復元。
例: 光のプリズムが異なる色に分けられる仕組みを逆に利用。
特徴
- 利点:
- 1本の光ファイバーで大容量通信が可能。
- 各波長が独立しているため、柔軟に帯域を増やせる。
- 既存の光ファイバーを最大限に活用可能。
- 欠点:
- 高精度の光学装置が必要で、コストが高い。
- 波長が干渉しないよう、精密な調整が必要。
種類
- CWDM(Coarse WDM、粗波長分割多重化):
- 波長間隔が広い(20 nm程度)。
- 最大18波長程度を利用可能。
- コストが低く、中距離通信に適している。
- DWDM(Dense WDM、密波長分割多重化):
- 波長間隔が狭い(0.8 nm以下)。
- 数十~数百波長を使用可能。
- 高コストだが、大容量で長距離通信に適している。
使用例
- 光ファイバー通信: インターネットの基幹ネットワーク。
- データセンター間通信: 高速・大容量の通信が必要な場合。
- CATVネットワーク: ケーブルテレビの配信。
TDMとWDMの比較
項目 | TDM | WDM |
---|---|---|
多重化の方法 | 時間を分割 | 波長を分割 |
利用可能な帯域幅 | 共有帯域を分割 | 各波長で独立した帯域幅 |
ハードウェアコスト | 低い | 高い |
データ遅延 | タイムスロットに応じた遅延が発生 | ほぼ遅延なし |
主な用途 | 音声通信、低速デジタル通信 | 高速インターネット、大容量光通信 |
10Gbps光回線の可能性
1. 超高解像度コンテンツの普及
- 未来の可能性: 8Kや16K解像度の動画ストリーミングが標準となり、さらに没入感のある体験が可能。
- 理由: 高解像度コンテンツは膨大なデータ量を必要としますが、10Gbps光回線ならスムーズに配信可能。
- 具体例:
- リアルタイムでの高品質映像配信(ライブイベントやスポーツ観戦)。
- 大容量データを使用するVR・ARコンテンツ。
2. リモートワーク・リモート医療の進化

- 未来の可能性: リモートワークやオンライン医療がさらに高度化し、社会のインフラとして定着。
- 理由: 10Gbpsの通信速度で、大容量のデータ(例: 医療画像や3Dスキャンデータ)をリアルタイムで送受信できる。
- 具体例:
- 医師が遠隔地でロボット手術を行う。
- 仮想オフィスでのリアルタイム会議や共同作業。
3. 高速クラウド利用の拡大
- 未来の可能性: クラウドベースのサービスがさらに高速・快適に利用可能。
- 理由: 高速通信により、大容量ファイルのアップロードやダウンロードが即時に完了。
- 具体例:
- 映像制作やゲーム開発のような大容量データを扱う作業が、ローカル環境と同等に快適になる。
- 個人レベルでもクラウドストレージがメインのデータ保存方法に。
4. スマートシティとIoTの実現
- 未来の可能性: IoTデバイスが高度に連携し、スマートシティが実現。
- 理由: 10Gbps回線は、多数のIoTデバイスからの膨大なデータを効率的に処理可能。
- 具体例:
- 交通インフラのリアルタイム管理(自動運転車のネットワーク)。
- エネルギー消費の最適化やスマートホームの高度化。
5. eスポーツ・オンラインゲームの飛躍的進化
- 未来の可能性: オンラインゲームやeスポーツがさらなるリアルタイム性と没入感を提供。
- 理由: 高速・低遅延な通信が、リアルタイムの対戦や大規模マルチプレイヤーゲームを可能にする。
- 具体例:
- 高品質なグラフィックでのストリーミングプレイが標準化。
- VR/ARを活用した新しいゲームジャンルの台頭。
まとめ
10Gbps光回線は、超高解像度コンテンツ、リモート医療、高速クラウド、IoT社会、eスポーツといった分野で社会のあらゆる側面を進化させる可能性を秘めています。これらの技術は、快適さや利便性だけでなく、新しい産業やビジネスモデルを生み出し、私たちの生活を劇的に変えるでしょう。
