上座部仏教と大乗仏教
上座部仏教
出家して修行を積むことでのみ悟りに達することができると説いている。
大乗仏教
お釈迦様の入滅から約500年たった紀元前後に、大乗仏教の経典が成立した。
日本の仏教はすべて大乗仏教である。
日本の仏教
法相宗
教義: 法相宗は、唯識(ゆいしき)思想を中心にした学派で、すべての現象は「心」が作り出したものであると説きます。
特徴: 仏教の哲学的側面が強く、理論的な修行が重視されます。日本ではあまり広がらず、学問的に重視されました。
本山: 薬師寺、興福寺
華厳宗
教義: 華厳宗は「華厳経」を中心とした教えで、宇宙全体の調和を説きます。「一即多、多即一」という相互依存の思想が特徴です。
特徴: 哲学的であり、華厳経の教義を深く学ぶことに重点を置いています。
本山: 東大寺
律宗
教義: 律宗は仏教の戒律(戒め)を重視し、戒律を守ることで仏道を実践します。
特徴: 修行者が厳格に戒律を守ることを目的としています。日本では奈良時代に重んじられ、後に他宗派に影響を与えました。
本山: 唐招提寺
天台宗
教義: 「法華経」を中心に、すべての人が仏になれる可能性を説きます。総合的な修行体系を持ち、禅、戒律、念仏などを兼ね備えています。
特徴: すべての教えを包括するという立場をとり、広範な仏教の実践を推奨します。
本山: 比叡山延暦寺
真言宗
教義: 密教に基づき、神秘的な儀式や真言(マントラ)を唱えることで仏と一体になることを目指します。
特徴: 密教特有の修行である、印契(いんげい)、真言、曼荼羅を使った修行が重要視されます。
本山: 高野山金剛峯寺
融通念仏宗
教義: 阿弥陀仏への「念仏」を多くの人が唱えることで、その功徳が全員に及び、共に救済されると説きます。
特徴: 念仏を他者と共有することにより、すべての者が極楽往生するという融通念仏の教義が特徴的です。
本山: 大念仏寺
浄土宗
教義: 阿弥陀仏の慈悲にすがり、念仏を唱えることで極楽浄土に往生できるとする教えです。
特徴: 念仏を唱えることを中心としたシンプルな修行法で、広く大衆に受け入れられました。
本山: 知恩院
浄土真宗
教義: 阿弥陀仏の救済を信じ、念仏は修行ではなく、信心に基づいて行われると説きます。
特徴: 念仏を唱えること自体が救いの行為ではなく、阿弥陀仏の救いを信じることが重要だとしています。
本山: 東本願寺、西本願寺
時宗
教義: 浄土宗系の教えを基に、念仏を行いながらも積極的に旅をして布教することを重視します。
特徴: 一遍(いっぺん)が開祖で、念仏の広がりを意識した巡礼や踊念仏が有名です。
本山: 清浄光寺
臨済宗
教義: 禅宗の一派で、公案(こうあん)という難解な問答を通じて悟りを得ることを目指します。
特徴: 鎌倉時代の武士たちに広く支持され、実践的かつ厳しい修行を行います。
本山: 建仁寺
曹洞宗
教義: 禅宗の一派で、ただひたすら坐禅を行う「只管打坐(しかんたざ)」を実践することが重要です。
特徴: 道元が中国から持ち帰った教えで、坐禅を中心としたシンプルな修行が特徴です。
本山: 永平寺、總持寺
黄檗宗
教義: 中国の禅宗に基づいていますが、独自の儀式や文化が発展しました。
特徴: 江戸時代に伝来し、中国風の儀式や建築様式を持つのが特徴です。
本山: 萬福寺
日蓮宗
教義: 「法華経」を唯一の正しい経典とし、「南無妙法蓮華経」を唱えることで救いを得ると説きます。
特徴: 法華経至上主義をとり、積極的な布教や社会改革を推進します。
本山: 久遠寺
四諦(したい)
四諦は4種の基本的な真理。苦諦・集諦・滅諦・道諦のことである。
苦諦
苦諦 (くたい):人生には苦しみが存在するという真理。
人生には4つの苦しみ「四苦(しく)」がある。この苦しみは不可避であり、人間の根本的な状態です。
四苦
生苦(しょうく) 生まれたことによる苦しみ
老苦(ろうく) 老いることで自由が利かなくなる苦しみ
病苦(びょうく) 病による苦痛を感じる苦しみ
死苦(しく) 死ぬことへの恐怖や不安の苦しみ
四苦八苦
日常的に経験することの多い四つの苦しみである「愛別離苦」、「怨憎会苦」、「求不得苦」、「五蘊盛苦」が加わったものが四苦八苦。
愛別離苦 (あいべつりく) 愛する人と別離する苦しみ
怨憎会苦 (おんぞうえく) 嫌な相手と会うことが避けられない苦しみ
求不得苦 (ぐふとくく) 望むものが得られない苦しみ
五蘊盛苦 (ごうんじょうく)肉体と精神が思うようにならない苦しみ
五蘊
五蘊(ごうん)とは、仏教で説かれる人間の存在を構成する五つの要素を指します。仏教では、私たちが「自己」として感じるものは、実体のない一時的な組み合わせ(集まり)であると考えられています。この集まりを「蘊(うん)」と呼び、「五つの要素」という意味で五蘊といいます。
仏教では、私たちが「自分」と感じているものは、この五蘊の一時的な集まりに過ぎないと教えています。つまり、五蘊に実体(固定された「我」)はなく、常に変化し続けるものです。これが仏教の「無我(むが)」の教えに繋がります。五蘊を理解することで、私たちは自己への執着を減らし、苦しみの原因を取り除く道に進むことができるとされています。
五蘊を通じて、仏教は「自分」や「他者」を固定的な存在と考えることが誤りであり、それによって生じる苦しみから解放されることを目指しています。
色薀
物質的な形や身体の要素。
受薀
感受、感覚。
想薀
表象、イメージ、記憶。
行薀
意思、行動、意志的な心の動き。
識薀
認識、知覚。
集諦
集諦(じったい):苦しみの原因が欲望や執着であるという真理。
苦しみは人々の欲望、執着、煩悩(かんのう)によって引き起こされます。これらの欲望が満たされないとき、苦しみが生じます。仏教では、この欲望を根本原因として苦しみが生まれると考えます。
滅諦
滅諦(めったい):苦しみの原因を取り除くことで、苦しみを消滅させることができるという真理。
欲望や執着を断ち切ることで、苦しみから解放され、悟り(涅槃)に至ることができるという考えです。苦しみを乗り越えるためには、心の中の煩悩を滅することが必要です。
道諦
道諦(どうたい):苦しみを消滅させるための具体的な方法(八正道)があるという真理。
苦しみを克服するためには、正しい生き方を実践することが重要です。この道筋は「八正道」と呼ばれ、正しい見解、思考、言葉、行い、生活、努力、気づき、精神集中を実践することを指します。
三法印
諸行無常
諸法無我
涅槃寂静
諸行無常
諸行無常 (しょぎょうむじょう)
世の中のすべては移り変わるもので、何ひとつ確かなものはない。富や名声、健康や愛する人の命も永遠に続かない
諸法無我
諸法無我(しょほうむが)
この世の存在の中に、我という実体はない
涅槃寂静
涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)
煩悩をなくして悟りの境地に到達すること
八正道
八正道(はっしょうどう)は、仏教における苦しみを克服し、悟りを得るための8つの実践方法を指します。八正道は、仏教の根本的な教えである四諦(したい)の「道諦(どうたい)」に含まれており、苦しみの原因(煩悩)を取り除くための具体的な道筋です。八正道の各要素には、「正しい」という意味の「正(しょう)」が付いていますが、これは「偏りがなく、中道を歩む」という意味を持ちます。
極端な快楽主義や苦行主義のどちらにも偏らず、バランスの取れた生き方を説いています。日常生活の中で実践可能な教えであり、仏教徒だけでなく、誰にでも役立つ倫理的な生き方の指針となっています。
八正道を実践することで、自己と他者に調和した生活を送り、最終的には悟りの境地に達し、苦しみから解放されることが目指されます。
正見
正見(しょうけん) – 正しい見解、正しい理解
正思惟
正思惟(しょうしゆい) – 正しい思考、正しい意志
正語
正語(しょうご) – 正しい言葉
正業
正業(しょうごう) – 正しい行い、正しい行動
正命
正命(しょうみょう) – 正しい生活、正しい生計
正精進
正精進(しょうしょうじん) – 正しい努力
正念
正念(しょうねん) – 正しい気づき、正しい心構え
正定
正定(しょうじょう) – 正しい精神統一、正しい瞑想