株式投資を始める前の基礎知識

がいの部屋

株式投資を始めるにあたって、企業の財務状況を読み解くことは非常に重要です。売上や利益、各種比率は、その企業がどれだけ稼ぐ力があるか、どれだけ効率的に経営しているか、そしてどれだけ健全な財務状態にあるかを示します。

財務指標

売上と利益

  • 売上高(または売上): 企業が本業の事業活動(商品やサービスの販売)で得た収入の総額です。どれだけモノやサービスが売れたかを示す規模の指標で、損益計算書の一番上に記載されています。
  • 利益: 売上高から、事業を行う上でかかった費用を差し引いて残った金額です。利益にはいくつかの種類がありますが、株式投資では主に以下の3つが重要です。
    • 営業利益: 売上高から、売上原価や販管費(販売費及び一般管理費)を引いた利益です。本業での儲けを示すため、企業の収益力を測る上で最も重要な指標の一つです。
    • 経常利益: 営業利益に、本業以外の収益(受取利息など)や費用(支払利息など)を足し引きした利益です。企業全体の事業活動の儲けを示します。
    • 当期純利益: 経常利益から、特別損益(不動産売却益など)や法人税などを差し引いた、最終的な儲けです。

売上高成長率

売上高がどれくらいのペースで成長しているかを示す指標です。前年同期比や前年比などで算出します。成長率が高い企業は、将来的に利益も大きく伸びる可能性があると期待されます。


安全性・収益性・割安性の指標

自己資本比率

企業の総資産のうち、返済する必要がない自己資本(株主からの出資や利益の蓄積)が占める割合を示す指標です。自己資本比率が高いほど、借金に頼らずに経営しているため、倒産しにくい安定した企業と判断できます。

自己資本比率=(自己資本÷総資産)×100

ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)

企業の収益性、つまりどれだけ効率的に利益を出しているかを示す指標です。

  • ROE (Return On Equity): 株主が出資したお金(自己資本)を使って、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。ROEが高いほど、株主にとって投資効率の良い企業と言えます。一般的に、10%以上が目安とされます。
  • ROA (Return On Assets): 企業が持つすべての資産(自己資本と借金)を使って、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。ROAが高いほど、資産を有効活用して利益を出している企業と判断できます。一般的に、5%以上が目安とされます。

ROE=(当期純利益÷自己資本)×100

ROA=(当期純利益÷総資産)×100


PER(株価収益率)

株価が、1株あたりの当期純利益の何倍になっているかを示す指標です。PERは、その企業の株価が割安か割高かを判断する目安となります。

PER=株価÷1株あたり当期純利益

PERは業種や企業の成長性によって水準が異なります。PERが低いほど、利益に対して株価が割安であると判断できます。しかし、将来の成長期待が高い企業はPERが高くなる傾向にあります。そのため、PERを比較する際は、同じ業種や過去の推移と比較することが重要です。

一般的な目安と成長性の判断基準

株式投資における各財務指標の適切な水準は、企業の業種やビジネスモデル、景気サイクルなどによって異なります。そのため、「絶対的な基準」はありませんが、一般的な目安と成長性の判断基準は以下の通りです。


1. 自己資本比率(財務の安全性)

  • 適切な水準: 業種によって大きく異なりますが、一般的に40%以上であれば財務的に安定している優良企業と評価されます。製造業など設備投資が多額な業種では低めになりやすく、ITサービス業などでは高めになる傾向があります。
  • 成長性の判断: 自己資本比率が低いからといって成長性がないわけではありません。借入を積極的に行い事業拡大を進めている企業では、一時的に比率が低くなることがあります。重要なのは、その借入によって事業が成長し、将来的に利益を生み出せるかです。

2. ROE(自己資本利益率)とROA(総資産利益率)(収益性)

  • 適切な水準:
    • ROE: 10%以上が優良企業の目安とされます。株主資本を効率的に活用して利益を生み出している企業と評価できます。
    • ROA: 5%以上が目安とされます。企業が持つすべての資産を有効活用して利益を出していることを示します。
  • 成長性の判断: ROEとROAが両方とも高い企業は、健全な財務基盤の上で収益力も高く、効率的な経営ができていると判断できます。特に、ROEが高いにもかかわらずROAが低い場合は、借金に頼ってROEを高く見せている可能性があるため、注意が必要です。

3. PER(株価収益率)(割安性)

  • 適切な水準: PERは株価が1株あたりの純利益の何倍かを示す指標です。一般的にPERが低いほど割安と判断されますが、適切な水準は業種や企業の成長期待によって大きく変動します。
  • 成長性の判断:
    • PERが低い: 業績が安定しているが成長期待が低い成熟企業や、市場から過小評価されている企業に見られます。
    • PERが高い: 将来の大きな成長が期待されている企業に多く見られます。これは、投資家が将来の利益拡大を見込んで、現在の利益水準から考えると割高な価格で株を買っていることを意味します。

成長性を見極める総合的な判断

これらの指標は単独で判断するのではなく、必ず複数組み合わせて総合的に評価することが重要です。

  • 売上高や利益の成長率: 過去数年にわたる売上高や利益が安定して増加しているかを確認します。特に、売上高成長率が高い企業は、事業が順調に拡大していることを示唆するため、今後の成長が見込めます。
  • キャッシュフロー: 営業活動によるキャッシュフローが継続的にプラスであり、投資活動によるキャッシュフローがマイナス(将来への投資を行っている)である企業は、本業でしっかりと稼いでおり、成長のために再投資を行っていると判断できます。

したがって、投資先の企業を評価する際には、高いROEROA、健全な自己資本比率に加え、継続的な売上高・利益の成長があるかを確認することが、将来の成長を見込める会社かどうかを判断する上で不可欠です。

Copied title and URL