Stable Diffusionの主要なWeb UIであるAUTOMATIC1111版と、その派生であるForge版には、それぞれ異なる特徴と利点があります。
1. パフォーマンスとVRAM効率
- Forge版:
- 高速化: xFormersやCUDA高速化が標準で搭載されており、AUTOMATIC1111版よりも画像生成速度が向上しています。同じ設定で比較すると、1枚あたりの生成時間が短縮される傾向にあります(例:約27%の削減事例も報告されています)。
- VRAM効率の向上: VRAM(ビデオメモリ)の使用量が削減され、比較的VRAMの少ないGPU環境でも、高解像度の画像生成や大きなバッチサイズでの生成が安定して行えます。メモリ不足エラーの発生も軽減されます。特に、SDXLのようなVRAMを多く消費するモデルでのメリットが大きいです。
- 起動速度の向上: Web UIが立ち上がるまでの起動時間もAUTOMATIC1111版に比べて速いとされています。
- AUTOMATIC1111版:
- 標準的な生成速度: 安定性を重視した設計で、広範なGPU互換性を持っています。
- 高解像度生成でのVRAM使用量: 高解像度での生成や、複数の画像を同時に生成する際にVRAM使用量が多くなる傾向があります。
2. 導入の容易さ
- Forge版:
- 導入の簡素化: 導入手順が簡素化されており、比較的短時間でセットアップが可能です。初心者でも扱いやすいように配慮されています。
- AUTOMATIC1111版:
- Python環境と依存関係の調整: 導入にはPython環境の構築や、さまざまな依存関係の調整が必要となるため、初心者にはセットアップの難易度がやや高い場合があります。
3. 安定性と機能性
- Forge版:
- パフォーマンス優先設計: パフォーマンスを優先して設計されているため、新しい機能や実験的な要素が多く、環境によっては安定性に欠ける場合やエラーが発生することもあります。
- デフォルト機能: ControlNetやFreeUといった主要な拡張機能がデフォルトでインストールされている点が利点として挙げられます。
- AUTOMATIC1111版:
- 高い安定性: 非常に安定して動作し、広くテストされているため、安定性を重視するユーザーには信頼性があります。
- 豊富な機能とカスタマイズ性: 多機能であり、多くの拡張機能が利用できます。細かいカスタマイズが可能ですが、その分初心者には調整が難しいと感じることもあります。
- 活発なコミュニティ: 長い歴史を持つため、コミュニティが非常に活発で、問題解決のための情報やチュートリアルが豊富に存在します。
4. 画像生成品質
- Forge版:
- 品質維持: 高速化とVRAM効率の向上を実現しながらも、画像生成品質はAUTOMATIC1111版と同等レベルを維持しています。ただし、細部においてAUTOMATIC1111版の方がわずかに書き込みが多い箇所が見られるという報告もあります。
- AUTOMATIC1111版:
- 高品質生成: 設定次第で非常に高品質な画像生成が可能です。
まとめ
特徴 | AUTOMATIC1111版 | Forge版 |
パフォーマンス | 標準的、VRAM消費多め | 高速、VRAM効率が良い(低VRAM環境に有利) |
導入の容易さ | やや複雑(Python環境の構築など) | 簡素化されている |
安定性 | 非常に安定、広くテスト済み | パフォーマンス優先のため、環境によっては不安定になる可能性あり |
機能性 | 多機能、豊富な拡張機能、高いカスタマイズ性 | 主要な拡張機能がデフォルトで付属、パフォーマンスに最適化 |
画像品質 | 高品質 | 品質は維持しつつ高速化(細部の違いは出る可能性あり) |
その他 | 歴史が長く、コミュニティが非常に活発 | 後発のため、新機能や最適化が進んでいる |
どちらを選ぶかは、ユーザーのPCスペック、重視する点(速度、安定性、導入の容易さなど)、そして利用目的によって異なります。
- PCスペックに自信がなく、とにかく速度やVRAM効率を重視したい場合や、手軽にStable Diffusionを始めたい初心者にはForge版がおすすめです。
- 安定性を重視し、豊富な機能や拡張機能を細かく設定したい、または既存のコミュニティ資産を活用したい場合にはAUTOMATIC1111版が適しています。
多くのユーザーは、それぞれの利点に合わせて使い分けたり、まずはForge版を試して、必要に応じてAUTOMATIC1111版も利用するといった選択をしています。