マイクロソフトのCopilot+ PC(コパイロットプラス PC)は、高度なAI処理能力をローカル(PC上)で実行できる次世代のWindows PCの総称です。従来のPCとは異なり、AI機能を最大限に活用するために設計されており、特にNPU(ニューラルプロセッシングユニット)と呼ばれるAI処理に特化した専用チップを搭載しているのが最大の特徴です。
概要
Copilot+ PCの主な特徴とできること:
- 強力なNPUの搭載:
- AI処理に特化したNPUを搭載しており、特に40 TOPS(Tera Operations Per Second:1秒間に1兆回の演算)以上の高い処理能力が必須要件とされています。これにより、クラウドに接続することなく、PC上で高速かつリアルタイムにAI処理を実行できます。
- 従来のCPUやGPUに加えてNPUが搭載されることで、AI関連のタスクを効率的に処理し、PC全体のパフォーマンスを向上させます。
- ローカルAI機能の強化:
- インターネット接続なしでも一部のAI機能が動作します。これにより、セキュリティが重視される環境やオフライン環境でもAIを活用できます。
- Recall(リコール)機能: PC上で行った操作や閲覧したコンテンツをAIが記憶し、後から自然言語で検索して瞬時に見つけ出すことができます。「先週見た緑色のグラフの資料」といった曖昧な指示でも関連する情報を提示してくれます。
- Cocreator(コクリエイター)/Image Creator/Restyle機能: テキストのプロンプトやラフスケッチから画像を生成したり、既存の画像を様々なスタイルに変換したりするAI機能がローカルで高速に動作します。
- ライブキャプション機能: リアルタイムで動画や音声の字幕を生成し、英語に翻訳する機能です。40以上の言語に対応し、オフラインでも利用可能です。
- Windows Studio エフェクトの強化: AIを活用して、ビデオ通話中の背景ぼかし、目線補正、顔の照明調整などをより自然に行うことができます。
- 自動スーパー解像度(Auto SR)機能: ゲームや動画の解像度をAIが自動で向上させ、より高精細な映像体験を提供します。
- その他:
- 高い省電力性: NPUがAI処理を効率的に行うため、バッテリー持続時間も向上しています。
- セキュリティの強化: AIパフォーマンスに特化して設計されているため、よりセキュアな環境でデータを保護できます。
- Copilotキーの搭載: 専用のCopilotキーを押すだけで、AIアシスタントのCopilotを呼び出せるようになります。OpenAIのGPT-4oなどの最新AIモデルとの連携も強化されます。
Copilot+ PCの主な要件:
- プロセッサ: 40 TOPS以上の性能を持つNPUを内蔵した、Microsoftが承認したプロセッサまたはSoC(System on a Chip)。具体的には、Snapdragon Xシリーズ、AMD Ryzen™ AI 300シリーズ、Intel® Core™ Ultra 200Vシリーズなどが該当します。
- RAM: 16GB以上のDDR5/LPDDR5メモリ
- ストレージ: 256GB以上のSSD/UFSストレージ
Copilot+ PCは、AIが日常の作業やクリエイティブな活動に深く統合される「生成AI時代」の新しいPCカテゴリとして、今後のビジネスや学習環境におけるスタンダードとなることが期待されています。
どのようなことができるか?
ネットに接続しなくてもAIがPC上で動作できるようになったCopilot+ PCは、これまでのPCと比べて、以下のような画期的な体験とメリットを提供します。
1. 速度と応答性の向上
- リアルタイム処理: これまでのPCでAI機能を利用する際、多くはクラウド上のサーバーにデータを送信し、そこで処理された結果を受け取っていました。この通信にはタイムラグが生じ、特に複雑な処理では待ち時間が発生していました。Copilot+ PCでは、NPUがPC内で直接AI処理を行うため、このタイムラグがなくなり、ほぼリアルタイムでAIの恩恵を受けられます。 例えば、画像生成や音声翻訳などの処理が瞬時に完了します。
- 遅延の回避: オンラインAIでは、ネットワークの混雑や回線の不安定さによって処理が遅延することがありましたが、ローカルAIではそのような影響を一切受けません。常に安定した高速なAI処理が可能です。
2. セキュリティとプライバシーの強化
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- データ保護: 重要なメリットの一つは、データがPCの外に出ないという点です。個人情報や機密性の高いビジネスデータなどをAIで処理する場合でも、インターネット上にアップロードする必要がないため、情報漏洩のリスクを大幅に低減できます。セキュリティが厳しく、外部ネットワークへの接続が制限される環境でも、AI機能を活用できるようになります。
- プライバシーの尊重: 個人の写真や文書などをAIで整理・分析する際、データがクラウドに送信されないため、プライバシーがより確実に保護されます。
3. オフラインでの利用可能性
- どこでもAI: インターネットに接続できない環境(飛行機の中、電波の届かない場所、災害時など)でもAI機能を利用できるのは大きな強みです。これまでのPCでは、AI機能の多くはインターネット接続が必須でした。Copilot+ PCは、場所を選ばずにAIの恩恵を受けられるようになります。
- 途切れない作業: 例えば、出張先のホテルでネット環境が不安定な場合でも、AIを使った資料作成や画像編集が途切れることなく行えます。
4. バッテリー持続時間の向上と省電力化
- NPUによる効率的な処理: NPUはAI処理に特化して設計されているため、CPUやGPUで同じ処理を行うよりもはるかに少ない電力で動作します。これにより、AI機能を多用してもバッテリーの消費を抑え、PCの長時間稼働に貢献します。
- 発熱の低減: 消費電力が少ないことは発熱の低減にもつながり、PCの安定性向上や冷却ファンの動作音の抑制にも寄与します。
5. 具体的に可能となる機能の例(これまでのPCとの違い)
機能名 | これまでのPC(クラウドAI依存) | Copilot+ PC(ローカルAI活用) | 補足 |
Recall (リコール) | なし(サードパーティ製ツールや手動検索) | PC上で行ったすべての操作や閲覧履歴をAIが記憶し、自然言語で検索して瞬時に見つけ出す。インターネット不要。 | 「先週見た緑色のグラフの資料」など、曖昧な記憶からでも探し出せる。 |
Cocreator/Image Creator/Restyle | クラウド接続必須で画像生成・編集。待ち時間がある場合も。 | テキストやラフスケッチから画像を高速生成。既存画像を多様なスタイルに変換。PC内で完結。 | アイデアを瞬時に形にできる。プライベートな画像も安全に処理。 |
ライブキャプション | ほとんどなし(特定のオンライン会議ツールなど限定的) | 40以上の言語に対応し、あらゆる動画や音声のリアルタイム字幕生成・翻訳(英語)。オフラインでも動作。 | 外国語の動画や会議内容をリアルタイムで理解できる。 |
Windows Studio エフェクト | 一部のWebカメラやアプリが提供する限定的な機能。 | AIで目線補正、背景ぼかし、顔の照明調整などをより自然に実行。NPUでより高品質・低負荷に。 | オンライン会議の質が向上し、プロフェッショナルな印象を与えられる。 |
自動スーパー解像度(Auto SR) | なし(高画質化はGPUの能力に依存) | ゲームや動画の解像度をAIが自動で向上させ、より高精細な映像体験を提供。NPUで効率的に処理。 | 低スペックPCでも高画質でゲームを楽しめる可能性。 |
Microsoft Copilot(AIアシスタント) | クラウド接続必須。 | オフラインでも一部機能が動作。よりOSに統合され、スムーズなアシスタント体験を提供。 | インターネットがなくても基本的な質問応答や文書作成支援などが可能になる。 |
これらの進化により、Copilot+ PCは単なる「高性能なPC」ではなく、AIがユーザーの生産性や創造性を飛躍的に高める「新しい時代のPC」としての役割を担うことになります。
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現在使用しているパソコンに部品を追加することでCopilot + PCにすることはできるか?
現在ご使用のほとんどのパソコンに部品を追加するだけでCopilot+ PCにすることはできません。
Copilot+ PCの最も重要な要件は、40 TOPS(Tera Operations Per Second)以上の処理能力を持つNPU(Neural Processing Unit)を内蔵した特定のプロセッサ(CPU)を搭載していることです。
これは、通常のPCで後付けできるグラフィックボード(GPU)やSSD、メモリとは異なり、CPU自体にNPUが統合されている必要があるためです。
具体的な理由としては、以下の点が挙げられます。
- NPUの統合: Copilot+ PCの要となるNPUは、現在販売されている多くの一般的なCPUには内蔵されていません。IntelのCore UltraプロセッサやQualcommのSnapdragon Xシリーズのように、NPUが最初からチップセットに統合されているものが必須となります。
- マザーボードの互換性: NPUを搭載した新しいCPUを搭載するためには、そのCPUに対応した新しいマザーボードが必要になります。既存のPCのマザーボードに新しいCPUを物理的に取り付けること自体が難しい場合がほとんどです。
- システム設計: Copilot+ PCは、NPUの性能を最大限に引き出し、AI機能を効率的に動作させるために、ハードウェアとソフトウェアが密接に連携するように設計されています。単にNPUだけを後付けしても、その恩恵を十分に受けることはできません。
- Microsoftの認定要件: MicrosoftはCopilot+ PCの要件を厳格に定めており、NPUの性能だけでなく、RAM容量やストレージの種類など、総合的なシステム要件を満たす必要があります。
したがって、Copilot+ PCの機能を体験するには、Copilot+ PCとして設計・製造された新しいPCを購入する必要があります。現在のPCのパーツ交換で対応することは、事実上不可能です。
Copilot + PCを使用する場合の注意点
Copilot+ PCは多くの革新的なメリットをもたらしますが、現状ではいくつかの注意点も存在します。導入を検討する際に考慮すべき点を以下にまとめました。
1. 初期の費用と選択肢の制限
- 高価な傾向: 最新のNPU搭載プロセッサやその他の高性能コンポーネントを搭載しているため、一般的なPCと比較して初期費用が高くなる傾向があります。
- モデルの選択肢: 発売当初は、利用可能なモデルやメーカーの選択肢が限られる可能性があります。今後は増えていくでしょうが、すぐに特定のデザインや機能を求める場合は注意が必要です。
2. 特定のAI機能の要件と制約
- NPUの性能要件: Microsoftが定める40 TOPS以上のNPU性能を満たしていることが重要です。これは、すべてのAI機能がスムーズに動作するための最低限の基準であり、将来的にさらに高度なAI機能が登場した場合、NPU性能が低いと対応できない可能性があります。
- Recall機能のプライバシーとストレージ:
- プライバシー懸念: Recall機能はPC上で行ったほぼすべての操作(閲覧したウェブサイト、開いたファイル、チャットの内容など)を記憶するため、プライバシーに関する懸念が指摘されています。Microsoftはプライバシー保護のための対策(ローカル保存、暗号化、ユーザーによるオフ・オンの制御など)を強調していますが、利用者はこの機能を十分に理解し、管理する必要があります。
- ストレージ消費: Recall機能はPCの活動履歴をローカルに保存するため、使用するストレージ容量が増加する可能性があります。特に長期間使用する、または多くのデータを扱う場合は、十分なストレージ容量を持つモデルを選択することが望ましいです。
3. アプリケーションの最適化
- NPU対応アプリの不足: 現状では、NPUの性能を最大限に活用できる、NPUに最適化されたアプリケーションはまだ多くありません。今後、開発者がNPUに対応したアプリケーションをリリースすることで、Copilot+ PCの真価が発揮されるようになります。現時点では、AI機能の多くはMicrosoft純正アプリや一部の主要なクリエイティブアプリに限られる可能性があります。
- 従来のアプリとの互換性: 従来のWindowsアプリケーションとの互換性は確保されていますが、NPUによる高速化の恩恵を受けられるのは、AI関連の機能に限られます。
4. 既存システムとの連携
- 企業環境での導入: 企業でCopilot+ PCを導入する場合、既存のITインフラやセキュリティポリシーとの整合性を確認する必要があります。特にRecall機能の管理やデータプライバシーに関するポリシーの見直しが必要になる可能性があります。
- データ移行とセットアップ: 新しいPCへの移行に伴うデータ移行やセットアップは、従来のPCと同様に手間がかかる場合があります。
5. 長期的なサポートと進化
- 今後のAI技術の進化: AI技術は日進月歩で進化しており、数年後には現在のNPU性能では不足するような、より高度なAI機能が登場する可能性もあります。Copilot+ PCがどの程度の期間、最先端のAI機能に対応し続けられるかは未知数です。
- OSアップデートと機能追加: Copilot+ PCに特化したWindowsの機能やAIモデルのアップデートが今後も継続的に行われるため、OSの更新は常に最新の状態に保つことが推奨されます。
まとめ
Copilot+ PCは、AIをローカルで活用することで、これまでのPC体験を大きく変える可能性を秘めています。しかし、新しい技術であるため、導入前には上記の注意点を十分に理解し、ご自身の使い方やニーズに合っているか慎重に検討することが重要です。特に、プライバシー設定やストレージ管理については、ユーザー自身が積極的に関与する必要があります。
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